今夜、上司と恋します



「永戸さんがずっと付いて回ってたじゃないですか」



そう言うと、佐久間さんは一旦口を閉じた。
沈黙が車内を支配してしまって、私は重苦しい空気にさっきの発言を後悔した。



いや、さっきから私自分じゃダメってばっかだな。
営業行くのが嫌だってわけじゃないんだけど、永戸さんのが適任の気がするからつい言ってしまうだけなんだよね。



赤信号で停止した時に、不意に佐久間さんが話し出した。



「確かに、永戸は華もある。接客を長い事やってるだけあって、スキルもある。
だけど、細かなミスが目立つ。
売上に影響のある様なミスは今までないが。
それに比べて坂本はミスが少ない。
資料についても、坂本が作成したものは訂正箇所がほとんど見当たらない。
そういう点で、俺は坂本を信頼している」

「……」

「だから、今日は坂本を連れて来た。
坂本ならきちんと頭の中に入ってると思ったからだ」
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