今夜、上司と恋します

「坂本か?」

そう、声をかけられて結構驚いたのを覚えている。


あんま会社で話した事もなかったし。
冷たい、怖いって有名だったし。

顔はそんな悪くないから、隠れファンがいるけども。



どうやら佐久間さんも一人で飲みに来ていたらしい。
話してみると意外と気が合って、酒がすすんだ私はいい感じに酔っ払ってしまい、気付けばラブホテルにいた。



冷静になって、一番に思ったのがやっちまった。だった。


しかも、会社の上司。
佐久間さんは独身だったから、そういう意味での不安はなかった。



シャワーで体を流した私は、バスタオルを巻いたまま部屋へと戻る。
そこには既に衣服に着替えた佐久間さんが、タバコを燻らせていた。


いつもパリっとしたワイシャツに、ネクタイをしめている。
さりげなくついたネクタイピン。
だけど、さっきの行為の所為で、彼のシャツには皺が寄っていた。



いつもきっちりとしてる彼の乱れる姿を知ってるのは、きっと会社で私だけ。
佐久間さんの浮いた話なんて聞いた事なかったし。


この感情は少しだけ優越感に似てる。

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