今夜、上司と恋します


「何。最近佐久間さんに気に入られてるの?お前」

「広瀬。突然出て来ないでよ」


ぬっと出て来て、急にそんな話しするな。


「どうなの」

「どうって。わかんないよ」

「さっきの新店舗チェックって、誰でもよかったんだよ」

「え?」


誰でもよかったってどういう事だ?
不思議に思いつつ、広瀬の顔を覗き込む。



「それに、佐久間さん一人で行ってもよかったんだ。
それを敢えて、坂本を連れて行くって事は、だ」

「……考え過ぎじゃない?」

「そうかー?この手の勘って結構当たるよ、俺」

「男の勘ってヤツ?」

「そーそー。って男の勘とか初めて聞いたわ」

「私も初めて知ったわ」

「それにしても、佐久間さんって謎だよなー」

「……謎?」

「うん。プライベートな事、ほとんど話さないし。
飲みに行った時も、色々聞いたけどのらりくらりとかわされるし」

「あんた根掘り葉掘り聞いたんでしょ」

「そうでもないけど」



ニヤっと笑っている広瀬。
これは色々聞いたに違いない。

それが想像出来るから、何とも言えん。

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