今夜、上司と恋します

「だって…佐久間さんって彼女の一人や二人、いてもおかしくないだろ?」

「……まあ」



好きな人はいるんだけどね。
だから、特定の人を作らないだけ。


そう思うが、広瀬に教えられる筈もなく私は言葉を濁した。



「あ、そうだ。今日坂本暇?飲みにいかね?」

「暇だけど、佐久間さんとの帰りいつになるかわかんないよ」

「へーき。俺今日やる事多いから、会社に残ってるし」

「ん。じゃあ、終わったら連絡する」

「はいはーい」



流石に今日はホテルって流れにならないだろう。
広瀬は思ってた以上に普通だし。


まさか、飲みに誘われるとか思ってなかった。


その時にあの事を聞かれたら……、どう返事をしようかな。



“俺は嫌だ”


そう言った広瀬を思い出す。
友達がバカな男に捕まってるから、言ってくれたんだよね。


でも、その男に縋ってるのは自分の方だって知ったら。


……広瀬は呆れるかな。


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