ウ・テ・ル・ス
「あれ、彼女に関しては、いつも社長が直接やってたのに、告示だけは私ですか?」
秋良が怒ったように三室を睨むと、三室は首をすぼめてうなずいた。
「みんなも知っての通り、この案件については失敗が許されない、各担当分野で細心の注意を払ってすすめてくれ。」
秋良の言葉を聞いて、各マネージャーは席を立った。秀麗はラインをオフし、他のマネージャーも部屋を出て行くと、秋良はひとり社長室に残り、バーカウンターで、ハイボールを作った。
今日の仕事は終わったと言うのに、どうもすぐ家に帰る気分にはなれない。グラスの中の氷を転がすと、カラカラと乾いた音が響いた。秋良は、作ったハイボールに口を付けることなく、いつまでも氷を転がしながら、自分の胸の中にあるモヤモヤとした気分はどこからきているのだろうかと考えていた。
このビジネスを始めて8年間。イリーガルでありながらこの高収益な事業を維持できたのは、彼の緻密で冷静な洞察力と大胆な決断力があったからこそだ。どんなトラブルも、冷静に分析し、大胆に決断し、考えうる最善の策で対処して来た。しかしそんな自分が、今胸に飛来するモヤモヤとした気分をまったく分析できないでいる。分析できないから、対処の方法が見つからない。こんなことは初めてだった。秋良は学生時代に読んだ本の一節を思い出した。『どうしても理解できないものは、存在していないことにするのが一番いい。』その言葉通り、今夜は倒れるくらい大酒を食らおう。そう決意して握りしめたグラスを、口に運んだ。その時、秋良のスマートフォンが鳴った。
真奈美は、なぜか秋良の家のソファーに座っている。そして部屋の様子から、秋良を理解する一端をなんとか見つけ出そうと試みていた。
秋良の家は、高級マンションの最上階にあり、夜の帳がおりた今では、リビングから都市の瞬きが一望できる。インテリアはモダンでシンプルだが、真奈美に言わせれば無機質過ぎて、生活の場としてはふさわしいとは思えない。確かにこんな部屋では食欲なんて起きっこない。
秋良が怒ったように三室を睨むと、三室は首をすぼめてうなずいた。
「みんなも知っての通り、この案件については失敗が許されない、各担当分野で細心の注意を払ってすすめてくれ。」
秋良の言葉を聞いて、各マネージャーは席を立った。秀麗はラインをオフし、他のマネージャーも部屋を出て行くと、秋良はひとり社長室に残り、バーカウンターで、ハイボールを作った。
今日の仕事は終わったと言うのに、どうもすぐ家に帰る気分にはなれない。グラスの中の氷を転がすと、カラカラと乾いた音が響いた。秋良は、作ったハイボールに口を付けることなく、いつまでも氷を転がしながら、自分の胸の中にあるモヤモヤとした気分はどこからきているのだろうかと考えていた。
このビジネスを始めて8年間。イリーガルでありながらこの高収益な事業を維持できたのは、彼の緻密で冷静な洞察力と大胆な決断力があったからこそだ。どんなトラブルも、冷静に分析し、大胆に決断し、考えうる最善の策で対処して来た。しかしそんな自分が、今胸に飛来するモヤモヤとした気分をまったく分析できないでいる。分析できないから、対処の方法が見つからない。こんなことは初めてだった。秋良は学生時代に読んだ本の一節を思い出した。『どうしても理解できないものは、存在していないことにするのが一番いい。』その言葉通り、今夜は倒れるくらい大酒を食らおう。そう決意して握りしめたグラスを、口に運んだ。その時、秋良のスマートフォンが鳴った。
真奈美は、なぜか秋良の家のソファーに座っている。そして部屋の様子から、秋良を理解する一端をなんとか見つけ出そうと試みていた。
秋良の家は、高級マンションの最上階にあり、夜の帳がおりた今では、リビングから都市の瞬きが一望できる。インテリアはモダンでシンプルだが、真奈美に言わせれば無機質過ぎて、生活の場としてはふさわしいとは思えない。確かにこんな部屋では食欲なんて起きっこない。