ウ・テ・ル・ス
「生まれた子供をどうするかは、母親が決めればいい。手放したくなれば胸にいだいたまま逃げればいい。手放してもいいなら、代議士夫人は大喜びするだろう。」
「そんな簡単なことですか?」
食い下がる三室。
「誰の意見も聞くつもりはない。チームが生きのびるための最善策を実践するのがCEOである俺の役目だ。」
それがどんな理不尽な理屈であろうと、秋良の確固たる口調に押され、ふたりは黙らざるを得なかった。もう守本ドクターも三室も会話を続ける気力を失っていた。黙りこむ三室に秋良が向き直った。
「そこで、三室には特別な仕事を頼みたい。」
「なんですか…。」
「2週間真奈美をホテルに軟禁して、逃げないように監視してくれ。」
「2週間後の先はどうするんです?」
「真奈美の好きにさせるさ。逃げてもかまわない。中絶したってかまわない。最初のチェックだけクリアすれば、その後はエコーデータにしろ、膨らんだ腹の外見写真にしろ、合成や他からの転用で代議士夫人を騙せるからな。」
「社長命令に逆らうわけじゃありませんが、社長の部屋に軟禁したらどうですか…。」
「もう俺の顔など見たくもないはずだ。きっと殺される…。」
三室は不承不承ながらも、社長の命令に従うことを了解した。
「それから、秀麗はやはり女だから、いくら最善策だと言っても、こんな話しには生理的に拒絶反応を示すだろう。事業を整理する話し以外は黙っていて欲しい。」
ふたりの男は黙ってうなずいた。秋良はふたりの了解を確認すると、ウエブを繋ぐように指示を出す。
「あんたたち、いつまで待たせるのよ。」
いきなり秀麗の怒った顔がモニターに飛び込んできた。
「悪かった…。実は秀麗、昨日の受精卵の挿入は成功したが、その後について俺の独断で決めたことがある…。」
秋良が淡々と説明を始めた。
三室に連れられ、帝国ホテルへやって来て2週間が経った。真奈美は、インペリアフロアのジュニアスイートで暮らして秋良の顔を見ずに過ごせたことが嬉しかった。自分の身に起きている事をとにかく整理したかったのだ。
「そんな簡単なことですか?」
食い下がる三室。
「誰の意見も聞くつもりはない。チームが生きのびるための最善策を実践するのがCEOである俺の役目だ。」
それがどんな理不尽な理屈であろうと、秋良の確固たる口調に押され、ふたりは黙らざるを得なかった。もう守本ドクターも三室も会話を続ける気力を失っていた。黙りこむ三室に秋良が向き直った。
「そこで、三室には特別な仕事を頼みたい。」
「なんですか…。」
「2週間真奈美をホテルに軟禁して、逃げないように監視してくれ。」
「2週間後の先はどうするんです?」
「真奈美の好きにさせるさ。逃げてもかまわない。中絶したってかまわない。最初のチェックだけクリアすれば、その後はエコーデータにしろ、膨らんだ腹の外見写真にしろ、合成や他からの転用で代議士夫人を騙せるからな。」
「社長命令に逆らうわけじゃありませんが、社長の部屋に軟禁したらどうですか…。」
「もう俺の顔など見たくもないはずだ。きっと殺される…。」
三室は不承不承ながらも、社長の命令に従うことを了解した。
「それから、秀麗はやはり女だから、いくら最善策だと言っても、こんな話しには生理的に拒絶反応を示すだろう。事業を整理する話し以外は黙っていて欲しい。」
ふたりの男は黙ってうなずいた。秋良はふたりの了解を確認すると、ウエブを繋ぐように指示を出す。
「あんたたち、いつまで待たせるのよ。」
いきなり秀麗の怒った顔がモニターに飛び込んできた。
「悪かった…。実は秀麗、昨日の受精卵の挿入は成功したが、その後について俺の独断で決めたことがある…。」
秋良が淡々と説明を始めた。
三室に連れられ、帝国ホテルへやって来て2週間が経った。真奈美は、インペリアフロアのジュニアスイートで暮らして秋良の顔を見ずに過ごせたことが嬉しかった。自分の身に起きている事をとにかく整理したかったのだ。