ウ・テ・ル・ス
どんな理由であれ、契約を破った秋良は許せない。しかし、レイプと言うには、最後に受け入れてしまった自分や喜びを感じてしまった自分に負い目があった。すぐに警察へ駆けこめない理由がそこにある。憎しみなのか、未練なのか、秋良への感情の整理に時間が必要だった。だからこそ、復讐なのか、逃亡なのか、自分の行動も決めることができなかったのだ。
やがて、ドアのノックとともに三室が顔を出した。
「さあ、妊娠チェックにいこうか。」
三室は無表情に真奈美に言った。真奈美は素直にうなずくと、黙って彼に従った。お互い黙ったままクリニックへ着くと、馴染みのある看護師が馴染みのある処置室へ真奈美を誘導していく。例の大鏡の前で真奈美は自分を見た。鏡に映る自分の顔が、今まで自分知っている顔とすこし違っていると感じた。
一方鏡の内側では、代議士夫人と秋良が真奈美を見ていた。秋良は久しぶりに見る真奈美の顔に、視線が吸い寄せられている。
真奈美は守本ドクターの指示に従い、処置室のカーテンコーナーで尿と血液採取をおこなう。妊娠すると受精卵からhCG(ヒト絨毛性 ゴナドトロピンHuman Chorionic Gonadotropin)というホルモンが分泌されるが、守本ドクターは尿と血液の両面からこのhCGの検出を試みる。そして、大きく安堵のため息をつくと、その試験紙とデータ票を大鏡の前に置いて、鏡に向かってOKサインを出した。
鏡のからくりを知らない真奈美はそんなも守本ドクターの振る舞いを不思議に思ったが、とにかく自分が妊娠している事が医学的に証明されたようだ。真奈美は驚かなかった。秋良の部屋でシャワーを浴びた時からもう解っていた事だから。
三室に送られて再びホテルの部屋に戻ると、三室はすぐに部屋を出ずにリビングのソファーに座り込んだ。
「少し話しをしても良いですか?」
いきなり切りだす三室に戸惑いながらも、真奈美は素直にソファーに腰掛けた。
「なんで敬語なんですか?」
「社長は自分にしてみれば、兄貴みたいなもので…。社長の子どもを身ごもっていることが分かった以上、俺にとっては姉さんになりますから。」
「何かヤクザみたいですね…。」
「いえ、自分はただの体育会系野郎なだけです。だから気にしないでください。」
「わかりました。」
やがて、ドアのノックとともに三室が顔を出した。
「さあ、妊娠チェックにいこうか。」
三室は無表情に真奈美に言った。真奈美は素直にうなずくと、黙って彼に従った。お互い黙ったままクリニックへ着くと、馴染みのある看護師が馴染みのある処置室へ真奈美を誘導していく。例の大鏡の前で真奈美は自分を見た。鏡に映る自分の顔が、今まで自分知っている顔とすこし違っていると感じた。
一方鏡の内側では、代議士夫人と秋良が真奈美を見ていた。秋良は久しぶりに見る真奈美の顔に、視線が吸い寄せられている。
真奈美は守本ドクターの指示に従い、処置室のカーテンコーナーで尿と血液採取をおこなう。妊娠すると受精卵からhCG(ヒト絨毛性 ゴナドトロピンHuman Chorionic Gonadotropin)というホルモンが分泌されるが、守本ドクターは尿と血液の両面からこのhCGの検出を試みる。そして、大きく安堵のため息をつくと、その試験紙とデータ票を大鏡の前に置いて、鏡に向かってOKサインを出した。
鏡のからくりを知らない真奈美はそんなも守本ドクターの振る舞いを不思議に思ったが、とにかく自分が妊娠している事が医学的に証明されたようだ。真奈美は驚かなかった。秋良の部屋でシャワーを浴びた時からもう解っていた事だから。
三室に送られて再びホテルの部屋に戻ると、三室はすぐに部屋を出ずにリビングのソファーに座り込んだ。
「少し話しをしても良いですか?」
いきなり切りだす三室に戸惑いながらも、真奈美は素直にソファーに腰掛けた。
「なんで敬語なんですか?」
「社長は自分にしてみれば、兄貴みたいなもので…。社長の子どもを身ごもっていることが分かった以上、俺にとっては姉さんになりますから。」
「何かヤクザみたいですね…。」
「いえ、自分はただの体育会系野郎なだけです。だから気にしないでください。」
「わかりました。」