ドナリィンの恋
ジョンは苦笑いしながら、麻貴を自分の荷物のあった場所に導く。すでに荷物は、迎えに来ていた車に積み込まれていた。豪華なリムジンに収まった麻貴は、彼が機内でポーチを拾ってくれた男であることを思い出した。『ストーカーかしら・・・。』とその警戒心を強めたが、芝居にしては彼が体中に刻んだ傷は確かに本物で痛々しかった。迎えに来ていた運転手が、ジョンの様子に驚いて、病院だとか警察だとか騒いでいたが、彼はそれを制して、まず麻貴のホテルに向かうように指示したのだ。
「人に殴られたのは初めての経験です。」ジョンが、裂けた唇を指でさすりながら麻貴に話しかける。
「フェンシングできるなら、最初からやればいいじゃない。」
「いや、こどものころに祖父に無理やり習わされただけで、今ではフルーレ(剣)も家でほこりをかぶっていますよ。僕は、John Tang(ジョン・タン)」
「私は、アサカ・マキよ。」
「日本人ですね。こちらにひとりで何しに来たのですか?観光ですか?」
「・・・いくら助けて頂いても、初対面のあなたに話す理由はないわ。」
麻貴の返答にジョンは二の句が継げない。彼はその容姿と財力と教養のおかげで、人並み以上の数の女友達を持っているが、会話を続けるのにこれほど苦労する女性と、いままで出会ったことが無い。運転手は、笑いをかみ殺すのに苦労していた。
「人に殴られたのは初めての経験です。」ジョンが、裂けた唇を指でさすりながら麻貴に話しかける。
「フェンシングできるなら、最初からやればいいじゃない。」
「いや、こどものころに祖父に無理やり習わされただけで、今ではフルーレ(剣)も家でほこりをかぶっていますよ。僕は、John Tang(ジョン・タン)」
「私は、アサカ・マキよ。」
「日本人ですね。こちらにひとりで何しに来たのですか?観光ですか?」
「・・・いくら助けて頂いても、初対面のあなたに話す理由はないわ。」
麻貴の返答にジョンは二の句が継げない。彼はその容姿と財力と教養のおかげで、人並み以上の数の女友達を持っているが、会話を続けるのにこれほど苦労する女性と、いままで出会ったことが無い。運転手は、笑いをかみ殺すのに苦労していた。