死神のお仕事
「遅い」
「すいませーん」
「予定と違う」
「すいませーん」
はぁ…と、大きな溜め息をついたその人は、デスクの前の椅子に座っていた。不健康そうな青白い顔色のせいで、綺麗な銀髪も白髪のように感じる。猫背で一回り小さく見える彼は、どこか疲れているような印象で、灰色の瞳は眼鏡を通してでしか見る事が出来ない。
「で、こちらが例の」
ジロリと、眼鏡の奥の瞳が私の方へ動いた。その瞬間、目の前の人に抱いたくたびれた印象は、勘違いへと変化した。
「田中あかりさん」
名前を呼ばれて、ゾクリと身体を駆け巡った嫌な予感。好奇心に支配されたその瞳は、生き生きと私を見詰めた。待ってましたと言わんばかりだ。
「キリヤです。よろしくお願いします」
差し出された手を握る。その手はとても冷たかった。