死神のお仕事

これが本当の自分



「戻ってきましたね」


「おかえりー」と、近寄ってきたセナさんの背中をよしよしと撫でると、サエキさんに何してんの?と、白い目で見られて我に帰る。無意識だった。勝手に懐いてくるセナさんを自分の猫のような気持ちで撫でていた。なんだこれ!


「気をつけないと、セナに全部喰われますよ」


「猫は強かなので」と、キリヤさんからの助言を頂いて、背筋が伸びる思いがする。猫と聞いて油断していた自分がいた。何故なら私は猫が好きだから。猫と聞いてからちょっと可愛くすら思うのだから本当に私ってば単純である。

離れて下さいとお願いすると、不満気にしながらもちゃんと離れてくれた。サエキさんとキリヤさんが居るからだろうか、良い子にしてくれて助かる。


「サエキ君。君がここに来てくれるなんて嬉しいです」

「……早く話を進めろ」


相手の目も見ずに答えるサエキさんだったけれど、キリヤさんはそれに気分を害した様子は無い。例の診察室へ案内され、二人分並べられた椅子に座った。セナさんはまたベッドの方に腰を下ろしていた。

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