俺様常務の甘い策略
社会人になって婚活を始めたのは……多分……颯介以上の男を見つけたかったから……。大学の時に、こいつに貶された事がショックだったんだ。

でも、顔や年収や肩書きで自分が好きになれるような男性はどこにもいなくて……。妥協してデートをしてみてもすぐに相手の事が嫌になって、次の約束はせずに終わった。

気づけばいつも颯介と比べてた……。

颯介以上の男なんているわけないのにね。

こいつと再会してからの私はかなり混乱していた。

颯介からの猛アプローチ。学生時代の奴の女の扱いを知ってるだけに、私はこいつに落ちるもんかと必死で抵抗していたのだけど……結局、無駄な足掻きだったのかもしれない。

殺されそうになって初めてこいつが自分にとって一番大事だって自覚するなんて……。

認めてやるわよ。颯介が好きだって。

ずっとこいつを好きにならないよう運命に逆らってた私ってホント馬鹿だ。

結局、こいつに捕まってしまうのに……。

でも……今はまだ私だけの秘密。

颯介がもっと甘えれば良いって言うんだから、今夜は……とことん甘えてやる。

だから、胸を貸して……。

触れればそこに颯介がいる。肌に伝わる温もりの優しさは……こいつの優しさでもある。

ここは……私だけの場所。そう自惚れて良いのだろうか?

それから颯介と何を話したのかは覚えていない。
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