俺様常務の甘い策略
ずっと断り続けていたが、トップに立って人を動かすのもいいと思った。

秋月が風間物産に就職する事は、大学卒業前に知った。高校の時に彼女をこき使い過ぎたせいか、彼女は大学時代、俺と関わるのを避けていた。

俺の挑発にも乗らず、いつも真っ直ぐ見据えたまま突っ走っていた秋月。

当時はそれでもいいかと思ってたけど、大学時代ちょっと物足りなかったのも事実。

卒業式に風間物産への就職を決めた秋月に「お前は一生俺には勝てないよ」と告げたのは、あいつが対抗心剥き出しで俺にまた向かってくる姿が見たかったからだ。

今思うと、風間物産にいずれ入る事を俺はあの時決めていたのかもしれない。

俺には聞きもしないのに秋月の事をアメリカ出張の度に報告する悪友がいる。そいつは風間物産に就職して、今は海外事業部の課長。こいつとは小学生からの付き合いで、高校の時は生徒会で一緒に仕事をした。割りと頭が切れて仕事も出来る。

風間物産では異例の出世だったらしい。父親は有名な造船会社の社長で、今は風間に武者修行に来ている。

「なあ、颯介。秋月がついに社長秘書になったぞ。今までいたお局秘書に引導を渡してな」
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