風は囁く「君と輝きたいから」
――もう1度、初めから歌って


詩月さんのおねだり、大役を任された不安を隠したような震える声。


「潮風が香る異国情緒あふれる街…………」


俺たちは、繰り返し歌った。


俺たちの歌声に合わせて、スマホ越しに詩月さんの歌声が聞こえる。


ウィーンと東京。
離れていても、俺たちは1つだと感じた。


「詩月さん、頑張って」という思いをこめて歌う。


「詩月さん、大丈夫。自分を信じて。思い切り思い通りに弾いて。ありのままに、詩月さんらしく」


――ん、ゲリラライブを思い出した。大丈夫だ。ちゃんと弾ける。いつも通り……自由に


「自由に?」


――ん、なんの心配も束縛もない自由。ドイツ語で「Liberte(リベルタ)」と言うんだ


「Liberte」

知っている、聞いている。

「Liberte」は、小百合さんが教えてくれた。

周桜くんの演奏は自由、「Liberte」なのーーと。


――そう。Liberte、リベルタ



詩月さんが舞台の上、背筋を伸ばし、凛として演奏する姿を思い浮かべた。

詩月さんのヴァイオリンが奏でる第九の演奏、爽やかで澄んだヴァイオリンの音色が、聴こえてくるようだ。

心の静寂を揺さぶる優しい音色。


Liberte――風が囁く




Fin.
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