『私』だけを見て欲しい
赤ん坊の頃、抱きしめるようにして実家へ戻った。
あの日から、あの子の親は私だけ。
私の大事な宝物。

『安らかに、何事もない人生を送れますように…』と付けた名前。
その名前の通り、せめて家の中だけは…平穏にしておきたい…。


「いいの?あんた今の仕事、好きだったでしょ…⁉︎ 」

あんな優しそうな上司もいるのに…って。
お母さん…マネージャーのこと、気に入ってるみたい…。

「いいの…私には、泰以上に大切な存在はいないから…」


幼い私に、愛情を教えてくれた。
優しい気持ちも温かさも、全部、あの子が教えてくれた。
だから、今は、あの子の側にいてあげたい。
目に見える場所にいて、あの子を守ってあげたい。


腕の中で、私に笑いかけてくれたように。

忘れられない過去を、残してくれたようにーーーーー


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