『私』だけを見て欲しい
今回は私の都合と言うよりは、家族の都合。
そんな場合でも、効果は発揮できるだろうか…。


(…それよりも今は、明日の朝が心配…)

頭痛と腹痛を抱える泰の様子。
土曜日の午後からと日曜日の夕方までは元気がいい。

…でも、夕飯の頃から、少し暗くなり始めた。


「…そろそろプールの時期ね」

学校の話題になると喋らない。
テレビを見ても、笑おうともしない。
明日のことを考えるのが怖いみたい。
…その気持ちは、スゴくよく分かる。

「ねぇ、泰…夏休みどっか旅行に行かない?」

学校生活を乗り切る為のアイテム。
『休み』という言葉は、いつの時代も最終手段だ。

「お母さん、仕事変わろうと思うし…一度くらい、泊まりがけで出かけるのもいいかなと思うんだけど…」

退職金が多少は出るハズ。
そんな大きなお金ではないと思うけど、近場の旅行くらいなら行けると思う。

「ね…?行ってみよ!」

気分転換に連れて行こう。
母も一緒に思いきり楽しんで、あの人のことを忘れるんだ…。


「…オレ、行かねーよ…」

箸を置いた泰が、手を合わせた。

「オヤと一緒に旅行なんて行ってもつまんねえ。…行くなら1人で行くっ!」
「1人で⁉︎ どこへ⁉︎ 」

地図なんか見れるの⁉︎ と聞いた。
泰はメンドくさそうに、「当たり前だろ…」と呟いた。

「オレやばあちゃんのことなんか心配しなくていいから!ヘンな気、使うなよ!」

仕事辞めるな…と言いた気。
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