『私』だけを見て欲しい
ヤケクソで辞めると思われてる⁉︎

(そんな事…ゼッタイにないのに…!)

自分に言い聞かせる。

仕事を辞めるのは、家族を基点に考えたいから。
間違っても、彼から離れる為じゃない。

辞めてしまえば離れることになる。
離れてしまえば、思い出さない。
元夫の時と同じ。
いずれは風化する…

(楽しい事も…イッパイ、あったけど…)

辞めた後の気分に浸りながら、入社したての頃を思い出した。
あの人の言うように、安いスーツの上下を着て、社内を案内して回られた。
1階から6階まである売り場フロアの中で、1番働いてみたいと思ってた所へ配属された。


山崎マネージャーの第一印象は…

(ハッキリしない人だなぁ…)

ぼぅっ…とした感じで仕事してた。
まさか私と同じように、相手に裏切られたばかりだとは思わなかった。

時々、無精髭を生やして仕事場へ来たり、髪に寝癖がついてたりしてた。
それを紗世ちゃんにからかわれることが多くて、彼女の苗字が変わった時を機に、ここぞ…とばかりにやり返した。

「大から小になったんだってなぁ!」

『大森』を『ダイモリ』、『小森』を『ショウモリ』と呼んでからかった。
紗世ちゃんはブチ切れて、マネージャーに怒鳴った。

『これからは苗字で呼ばないで下さい!!今度呼んだら、セクハラで訴えます!!』

気の強い部下に辟易してた。
あの時からマネージャーは、紗世ちゃんを苗字で呼ばない代わりに、名前で呼び捨てるようになった。

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