『私』だけを見て欲しい
「お母さん、もうその辺で…」

辟易。疲れてる上に愚痴まで聞かされたら余計に滅入る。

「あんたは仕事でいないから、泰良の様子が分かんないだろうと思って話してやってんのに…」
「うん…だから、分かったって。よく本人に言っとくから…」

生意気で可愛くないけど、一応、自分が生んだ子だから、家族といえど、あまり悪いことは聞きたくない。

「あんたがそうやって甘やかすから、あの子は部活も辞めちゃうんだよ。根性ないったら…」

ブツブツ。
それも私のせいなのね。

「…はいはい、分かった。また別の部活も勧めてみるから。とにかく落ち着いて食べさせて」

味しなくなる…とは、言えないから黙る。
母は納得のいかない顔で立ち上がり、自分の部屋へ戻っていった。

毎晩のように繰り返される同じ出来事。
こんな日常から切り離されて、時々、自由に生きたいと思うこともあるけど…

(そんなの考えたらバチ当たるよね…)

考えてはいけないこと。
私がここへ帰ってきたことで、母の人生は大きく変わってしまった。


……一人で食事を済ませて、息子の部屋へ行った。
泰は勉強もせず、机の上にマンガを広げて読んでる。
中学生なら当たり前過ぎるくらい、当たり前の光景だけど…。


「泰!勉強はいつするの⁉︎ 」

母の手前、一応親らしく接しよう。

「せめて、宿題くらいやりなさいよ⁉︎ 授業ついていけなくなるよ⁉︎ 」

チッ…と、またしても舌打ち。
聞く気ないな、この子。
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