『私』だけを見て欲しい
ドアを押し開けて出ようとする。
隙間から吹いてくる風。
すぅ…と涼しくなった間を、広げるように前へ進んだ。


「佐久田さん…俺は、どんなお前も好きだぞ」

ビクッとして振り向いた拍子に、紙コップが滑り落ちた。
あっ…と声を出しそうになる私をマネージャーが抱き寄せる。



……12年ぶりの感覚に驚く。

甘いミルクコーヒーの香りに包まれた自分が、20歳の頃に逆戻りしたみたいだったーーーー
< 73 / 176 >

この作品をシェア

pagetop