押してダメでも押しますけど?
S.A.Sとの打ち合わせは今日も順調に進んだ。


「社長の目の下の隈、凄かったですね・・・」


タクシーで帰社する途中、副社長に声をかけた。


「あぁー、凄かったね。」


「寝不足なんですかね?」


「・・・うん。まぁそうだろうね。」



「・・・・?」



副社長の言葉の歯切れが悪い気がした。



「まぁ、限界なんだろね。」


「限界?」


「太田川さんのことが。」


「あぁ・・・」



何とも言いづらい。


それから、車内は沈黙が流れた。



「・・・・あっ。」



私は、ある事を思い出した。



「どうかした?」


「マズイですよ!」


「え?何が?」




慌てる私に、副社長は怪訝な顔になる。




「今日は、土井社長が来られる日です!」


「それがどうしたの?」


普段、会社にいない副社長にはピンと来ないらしい。




「土井社長は、必ず娘さんと一緒に来られるんです!!」


「あー・・・それはちょっと面白いかもね」




この人の思考回路は、私とは別物らしい。




「面白いわけないじゃないですか!!」


「大丈夫じゃない?みんな大人なんだし」



いや、大丈夫じゃ無いと思う。



土井社長の娘さんも太田川さんも気が強い。


平穏には済まないと思う。




「まぁ。何かあったら社長がどうにかすると思うよ?」



副社長がのんきにそう言った。




ダメだ、この人、話にならない。


私には、あの二人をフォローする社長が思い浮かばない。


落ち着かな気持ちを抑えつつ、会社に着くのを待った。
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