シンデレラタイム
脳裏に千花ちゃんと柊大の泣き顔が浮かんだ。
お願い、やめて。
「あ。それと。」
彼は思い出したかのようにニッコリ笑って。
「今日、千花は帰さないから。」
そう告げると、ゆっくりあたしの顔の位置まで屈んで「またね。」と微笑んだ。
「千花!行くよ。」
「あ、うん。じゃあね、光里。」
ヒラヒラ右手を振って嬉しそうに去っていく姉と、その隣の憎たらしい男をボーッと見つめる。
…行っちゃダメだ。
「よし、浅水。スーパー行くぞ!」
グイって引っ張られた右腕を、そのままにできなかった。
ぐっと足に力を入れて、あたしを引っ張る真島に流されないようにする。
「お〜い。浅水?」
「ごめん、千花ちゃんとこ行かなきゃ。」
「は?」
真島の腕を振り切って走った。
夜の街を、怠そうなサラリーマンや若いお兄さんお姉さん達の間を塗って走った。
今動かなきゃいけないから。
じゃないとあたしは後悔する。