麗雪神話~青銀の王国~
やっと出たセレイアの声は、掠れていた。

「これは………」

ディセルは顔を歪め、自嘲するように嗤った。

「これは、天上界の挨拶だって、言ったら……?」

セレイアは背中に冷や水を浴びせられた心地で、その台詞を聞いた。

(挨拶ですって…? 天上界の…? それって……)

そんな方法を最近のディセルが知るとしたら、相手は一人しかいない。

セレイアはかっと逆上した。

気が付いたら、ディセルの頬を思い切り平手打ちしていた。

「最低!! つまり、誰とでもするのね!!
見損なったわ…バカディセル!!」

溢れだした涙を隠すように、セレイアは後ろも見ずに駆け出した。

駆けて駆けて、自室に向かう。

こんな顔で、広間に戻ることはできない。

(ただの挨拶ですって?
死ぬほどどきどきした私はなんなのよ!!)

ただの挨拶なら…

なんであんな泣きそうな顔をしたのだろう。

なんであんな自嘲するように笑ったのだろう。

なんで………

(なんで―――――っ)

胸の痛みが止まらない。

そして胸のどきどきも、……。

セレイアは自室に飛びこみ、ドレスを脱ぎ捨てベッドにもぐりこんだ。

しかし胸は千々に乱れ、到底眠れそうもなかった。
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