麗雪神話~青銀の王国~
―全然眠れなかった。

朝を迎え、セレイアは思った。

鏡をのぞきこむと、目が少し充血している。それに、たくさん泣いたせいで、腫れぼったい。ひどい顔だ。これでは人前に出られない。

冷やした布で目を冷やしながら、セレイアはまたも昨夜のことを思い返していた。

考えたくないのに、忘れたいのに、勝手に蘇ってくるのだ。

ディセルの…唇の感触が。

あの辛そうな顔が。

挨拶だと言われた衝撃が。

じわりとまた涙が湧いて出て、セレイアは慌ててそれをぬぐった。

(ディセルのバカ。
ディセルなんか大嫌い)

そう思うと、胸が痛んだ。きっとそれは、本心を裏切る言葉だったのだろう。だから胸が痛むのだ。けれど、今のセレイアにはそんなことわからなかった。ただ胸が痛んで、どうしようもないのだ。

その時遠慮がちのノックの音が聞こえて、セレイアは慌てて鏡を確認した。

冷やしたおかげで腫れぼったさはとれている。

この顔なら泣いたことはばれないだろう。

「…はい」

セレイアが返事をすると、くぐもった声が聞こえた。

「セレイア? 私だが」

セレスだ。

どうせ断っても入ってくるだろうと思ったセレイアは、ドアを開けた。
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