麗雪神話~青銀の王国~
その台詞を、ディセルは木の影から絶望的な想いで聞いていた。

悶々としていても仕方ないしと、空中庭園に、散歩に出ていたら、セレイアがやってきたのだ。

木の影になっていたから、ディセルの存在に、セレイアは気が付いていないみたいだった。

聞くつもりはなかったが、聞こえてきた二人の声に、つい耳を澄ませてしまっていた。

(ヴァルクス、か………)

到底超えられない、分厚く高い壁。

セレイアは彼に、今も想いを寄せている……。

口づけなんてしたところで、その事実は変わらないのだ。変わらない。

(……くそっ)

ディセルは泣きたい気分で、踵を返した。

しばらく目的もなく歩いていると、いつのまにか目の前に大巫女ハルキュオネが立っていた。

「スノーティアス様。
ご機嫌がすぐれないご様子ですね」

「ハルキュオネ様」

ディセルは困って、眉尻を下げる。

この厳格な大巫女を、ディセルはちょっぴり苦手としているのだ。
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