麗雪神話~青銀の王国~
セレイアとレティシアは、少しずつではあるが打ち解けてきたように思う。

二人は今山のような護衛を引き連れて、旅芸人の待つ広間へと向かっていた。

セレイアは、万が一にもラピストリになるわけにはいかない。ということは、最終試練までにどうやって自力でここを逃げ出すか。

いくら考えても考えたりないセレイアは、またすぐに物思いに沈む。

そうこうするうちに、大広間へとたどりついた。

(芸なんて見ている場合じゃない。どうすれば騎士たちの目をかいくぐって…)

そこまで考えて、大広間に控えていた旅芸人二人の姿が目に入った時、セレイアは平静な顔を保てていただろうか。

自信がない。

(―――――!!)

赤い髪の凛々しい青年と、銀髪の美しい青年。

セレイアの視線は、無意識に銀髪の青年の方へと引き寄せられた。

(ディセル……!!)

こんな近距離で見るのは、なんて久しぶりだろう。

相変わらずこの世のものとは思えぬほど美しい。

隣のレティシアも、二人の姿にみとれている。

「まあ…なんて美しい殿方なのでしょう」

不自然にならぬよう、セレイアも「そうですね」と同調した。少し、声が震えていたかもしれない。
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