暁天の星

恒星



【リカ】


シリウスだ。

近くにはオリオン座がある。



冬の夜空は空気が澄んで、ダイヤモンドを散りばめたように一段と綺麗に見えた。


いつの時代も、人はこうして空を見上げ。
あの青い星を見て、心を動かされるのだろうか。



わたしが見ているあの星は。


何百年も前に生きていた人も、きっと見ていた。

同じ星を、見ていた。



藍色の夜空に、星が煌めく。



ごめんね、手が冷たいね。

寒かったよね。


帰ったら、暖炉に火をつけよう。

ホットミルクも一緒に作ろう。



だから00時までには帰ってきて。




隣の小さな手を握り、南の空に問いかける。




ねえ、シリウスが綺麗だよ。


見ている?


何処でもいい。

何処かで見てくれているなら。



一緒に在れなくても、誰もが同じ空を見ることができると。

同じ星を見つめることができると。


そう言ったのはあなただから。



ぎゅっと握った手のひらに、大切なものがあるの。


それを、いつか伝えたいから。




返事の代わりに流れる一筋の星を背に。


今日も真っ直ぐ。家へ帰ろう。




きっとそれが、私たちにとって何よりも大事なものだったんだよ。




そんな想いを、シリウスに託すの。


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