地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
 手を振って背中を向けた彼に、私は「あのっ!」と考えなしに声をかけていた。

 鼓動が暴れて苦しい。

 振り向いて首を傾げる立花君にじっと見つめられて頭が真っ白で。

 ジュースを握る手にぎゅっと力が入る。

「あの、あ、ありがとう、ございました!声、かけてくれて、がんばれって……う、嬉しかったので」

 この時の私を思い返しても、ただただ恥ずかしい。だけど、彼は……

「柊さんが諦めずに立ち上がってくれたから、俺も頑張れた。だから、お互い様!」

 そう言って、笑ってくれた。

 多分、この時のこと、ずっと忘れられない……忘れたくない。

 彼の笑顔に、私は恋に落ちていた。

 叶わない事は最初からわかっている。

 そんな恋をする女の子を、今まで少し馬鹿にしていたりもしたけど、自分じゃどうにもならない気持ちがある。

 よりにもよって、私とは正反対の立花君を好きになるとは身の程知らずにも程があるだろうけど。

 だって、おとぎ話に出てくる王子さまみたいな、皆から愛される立花君と、ただの通行人くらいにしかなりそうにない地味な私。

 それでも、私は立花君を好きになりました。

 もし、フェアリーゴッドマザーがいたら私に勇気の魔法をかけていただきたい……なんてね。
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