いつかウェディングベル
「え・・と、私と蟹江さんで倉庫へ行ってきます!!」
吉富の顔を見て加奈子はかなり怯えたような顔をし蟹江の腕を引っ張りながら倉庫へ行く準備を始めた。
俺としては吉富と一緒でなかったらよい訳で、加奈子が蟹江だろうが坂田だろうが女の社員と一緒なら文句は言わない。
加奈子に引きずられる様に蟹江は連れて行かれたが、二人の姿が販促課からいなくなるのを確認し俺は自分のフロアへと戻るつもりだ。
勿論、吉富が後を追って行かない様に見張っているつもりだが。
「在庫数にシールも問題ないのか?」
「今、報告が上がっている分は問題ないようです。」
「お客からのレビューはどうだ? その対応は誰が担当している?」
「女性の目から対応した方がお客にも伝わりやすいだろうからと、女性社員三人にお願いしています。」
淡々と話す吉富だがどう見ても俺を睨みつける鋭い目をしている。
きっと、いろいろと聞きたいことも言いたいこともあるのだと思っているが、敢えて俺は言わせない様に吉富の鋭い目を更に上回る程の眼つきで見ていた。
これこそ、周りが見ていて火花を散らす光景なのだろう。
俺も吉富もそれを分かって睨みあっているのだ。そして、どちらも引く気はない。
吉富は俺をどんなに威嚇しようともお前が夢中になっている加奈子は俺に夢中なんだ。
そして既に俺は加奈子を手に入れた。そして、長男の芳樹もいるのだ。
吉富、お前は俺には勝てないし勝とうなんて考えても無駄だ。それは無謀と言うものだ。そんな日は一生待っていても勝つ日は来ないし待ちぼうけを喰らうだけだ。
そう思っているとついフッと鼻で笑ってしまった。
完全に相手を見下す笑いをしてしまったと我ながら呆れてしまった。
仕事上の立場でも格下相手にこんな態度を取るなんて俺らしくもないと思ってしまった。
「すまないね、吉富君。私はこの後も忙しいんだ。そういつまでも君の相手はしていられないんだよ。」
完全勝利者の顔をした俺は販促課から立ち去って行った。
そんな俺の後姿を悔しそうに見ていた吉富は握り締める拳がかなり震えていた。