いつかウェディングベル
「これどうして透が?」
「俺に隠して親父に企画提案していたんだろう?」
「してないわよ。だって、これは私がこんなのがあれば良いなって自分の中だけのイメージで作り上げたただの私の夢の企画みたいなものだから。」
夢の企画? 自分の中だけで作り上げたイメージ?
そんな加奈子の夢が詰まった資料なら尚更夫である俺にまず見せるべきだったんじゃないのか?
それを、俺ではなくて親父に見せるなんて。
「企画作成日を見る限りシングルマザーが夢見ていたウェディングプランを現実のものにしたかったんだろう?」
「この時はそうかもしれないけど。私なりに夢は持っていたからそれを文書にまとめていたのよ。でも、これは人の目に触れない様に引き出しにしまっておいたものだわ。」
引き出しに? しまっておいた?
それはどういう事なんだ?
俺と加奈子の寝室を親父が物色していたとでもいうのか? いや、しかし、そうとしか考えられない。
加奈子は俺にそこまで嘘は言わないはずだ。引き出しに入れていたのならそうだろう。
となると、そこから持ち出したのは親父という事になる。
「俺の早合点だという事がよく分かった。悪かった。君が俺に内緒で事を勧めているのかと腹立たしくなってしまったんだ。」
「そんなことはしないわ。でも、どうして、これを?」
「だいたいのことは想像がつく。親父のヤツ、またよからぬことを企んでいるんだ。」
俺と加奈子は親父が何を考えているのか到底検討はつかない。
つかないがそれらしいことは思いつく。
しかし、加奈子が俺を信用せずに親父を頼ったと思っていたことが全部俺の勘違いで済んでホッとしている。
「あの、ところで田中さんは倉庫へは行くの?行かないの?」
加奈子と二人で話をしたのは良いが、すっかりここは会社でしかも加奈子の職場の販促課だという事をすっかり忘れていた。
今の加奈子との会話をしっかり周囲の社員には聞かれてしまったが、この会話の内容だけで俺達の関係までバレてはいないか気になっていると吉富の鬼の様な形相が目に入り俺はかなり不味い状態だと思えた。