いつかウェディングベル
吉富はかなり興奮状態でいつもの吉富の顔をしていない。きっと、加奈子を俺に取られたと勘違いをしているのだろう。
「待ち伏せか?趣味が悪いぞ。」
「趣味が悪いのはどっちですか? 彼女をこれまで支えて来たのは俺だ。あんたじゃない!今頃横からひょっこり出てこられて連れ去られては困るんですよ。」
「横取りしたような言い方は止せ。元々お前は彼女とは無関係だ。ただの職場の先輩後輩だろう。」
「それでも俺は彼女が入社以来ずっと彼女を手助けしてきたんだ!田中を支えたのはあんたじゃない。俺だ!」
吉富の言い分は分からなくはない。しかし、そこにはただの職場の同僚と言うだけで愛情は含まれていない。
そんな簡単なことが吉富には分からないのか?
今の興奮状態の吉富にはきっと何を話しても無駄だろう。今の俺達のキスを見ていたんだ。加奈子に裏切られた気分になって気が動転しているのだろうから。
「俺は加奈子を愛している。そして、過去は振り返らないことにしている。」
そうだとも、今更過去をどうこう言っても始まらない。俺達は過去に生きているのではないんだ。
今を生きている。だったら今の俺達の気持ちを最優先して何が悪いんだ?
「だから、お前がどんなに加奈子を愛したとしてもそんなのは関係ない。」
吉富はかなり神経が高まっているようだ。これ以上の挑発は良くない。
そうとは分かっているが、それでも、俺は止められない。加奈子を渡すわけにはいかないんだ。
俺には加奈子が必要だし、加奈子だって俺を必要としているはずなんだ。
「今、俺が愛しているのは加奈子であり、加奈子が愛しているのは俺だ!」
吉富はきっと入社した頃から加奈子への感情を持っていたのだろう。それが、日に日に高まりいつかは吉富と一緒の未来を歩んでくれると思ったに違いない。
俺がそう思っていたように。
だけど、加奈子との未来は俺が歩む。加奈子は俺のものだ!!