いつかウェディングベル
「それでね、お母さんがこっちへ引っ越ししやすいように私の名義でマンションを買うことにしたのよ。」
「俺のマンションを使って良いと話しただろう? なんでそんな事をわざわざする必要があるんだ?」
俺のマンションなら設備も十分だし即入居できる状態だ。マンション暮らしだけど十分満足してもらえる広さもあり、道便利も悪くない。電車やバスの利用にもとても便利な住みやすい所だ。
だから、俺のマンションを提供すると話したのに、何故、加奈子はわざわざマンションを買うなんて無茶な事をするんだ?
加奈子の働きではマンションの購入金額の返済はかなりの年数がかかるだろう?
「お前の為でもあるんだぞ、透。」
「どういうことです?」
「加奈子さんのお父さんの事故の責任はお前にもある。勿論、私も無関係ではない。その慰謝料含め謝罪とこれまでの生活と治療費などを考えて現金を渡そうとしても受け取ってもらえないんだ。」
「それは最初から分かっていたことじゃないですか。」
「だから、こちらの病院へ転院しても柿崎家の世話にはなりたくないだろう?だけど、娘の家だったらどうだ?」
確かに、それだと加奈子の両親も気兼ねなく世話になれるだろうとは思うが、でも、名目が変わっただけで所詮は柿崎家のものだと変わりはない。
そんな面倒な事をせずに納得してもらえるまで説明して説得すればいいだけの様だが。
「新会社は加奈子さんへの結納金を充ててもらったから、当然、加奈子さんの会社だ。その会社を抵当に私がマンション購入の費用を貸した。という事は、紛れもなく加奈子さん個人の所有物となる。」
「面倒なことをしなくてもいいのに。」
「あの親父さんがお前の家に世話になると思うか? お前は娘を妊娠させ捨てた男だったんだぞ。加奈子さんの家族をバラバラにした憎い男だと言う自分の立場を忘れるな。」
それを言われると自分が犯した罪の大きさを改めて思い知る。