いつかウェディングベル
「珍しい顔合わせですね。それに、今日は不在のはずですが一体これはどういうことなのか説明頂きましょうか?」
親父は俺の顔をしばらく見ると隠し事は無理と悟ったのか課長と坂田を社長室から下がらせた。
そして、社長室に残った俺と加奈子にソファへかける様に言うと、俺達は隣に並んで腰を下ろした。
すると親父は分厚い資料を俺の前へと置いた。
その資料の表紙を見るとそこには「ウェディング部門設立について」と書かれていた。
やはり俺に隠したまま加奈子と二人で事を勧めようとしていたようだ。
会社の一事業を専務の俺に相談もなく加奈子と話を進める親父の気が知れないし、加奈子も加奈子だ。俺をいったい何だと思っているのか流石に俺も堪忍袋の緒が切れそうになる。
「これは我が社とは別の会社として設立するつもりだ。」
「別会社?」
「とは言うものの、これは私のポケットマネーから出資するのと加奈子さんの結婚資金も充ててもらった。だから、この会社の責任者は加奈子さんだ。」
加奈子の結婚資金? そんなものがあるはずないだろう?
芳樹との生活でひっ迫はしていても余裕などはなかったはずだ。
流石に親父も俺にはそんな説明では納得させられないと思ったのか、頭を掻き出し困った表情をしていた。
「社長、私は今回の申し出をとても有難く思っています。それに、こんなこと何時までも秘密には出来ませんよ。」
加奈子も隠し通せないと思っている様で俺の顔を見ながら少し気まずそうにしていた。
息子の俺に隠し事をするなんて無理だとは思わなかったのか。親父も考えが浅はかだと思えた。
「実はね、私のお父さんのリハビリの為にこちらの病院へ転院させることにしたの。」
それは俺も提案していたことだし、ウェディング部門を設立することを条件に親父に全てを任せていたから俺は承知している。
今更、それを俺が邪魔するわけでもないしそれについては文句をいう事は何もない。