いつかウェディングベル

親父は俺を脅すかのような言葉を残して社長室から出てしまった。



「それで俺はどんな協力をすればいいのか教えてくれないか?」


「教えてくれって顔をしてないわ。そんなに怒らなくてもいいのに。」


「怒りたくもなるだろう? 親父が俺に隠し事をしたがるのは何となく分かるが、加奈子は俺の妻だろう? その妻に隠し事をされたんじゃ俺ってそんなに信用できないのかって落ち込みたくもなるだろう?」


「ごめんなさい」



加奈子は俯くと顔を上げれないでいた。少し言い過ぎたかと思ったが一度口に出してしまうとなかなか引っ込みがつかなくなってしまう。


俺は、加奈子が俺ではなく親父を頼ったのが気に障ったんだ。俺を頼って欲しかったと相談して欲しかったと思っていたんだ。



「言い過ぎたよ。ごめん、加奈子。」



加奈子は俯いたまま首を左右に振ったがやはり顔を上げることが出来ずにいた。


俺は加奈子の肩を抱き寄せて頭を撫でた。



「そうだよな、加奈子の両親が絡んでいるのに加奈子たち家族に酷い仕打ちをした俺がしゃしゃり出てはまとまる話もまとまらないからな。悪かったよ。」



「でも、透は私を大事にしてくれるし私の両親も大切に扱ってくれるわ。感謝してるのよ。」



「わかってる、わかってるよ。だから、もう、この話はよそう。」



分かってなんかいない。


俺は加奈子を手に入れた幸せに浸っているだけで何も分かってなんかいないんだ。


加奈子に辛い思いをさせているのには違いない。


あの時、親父に婚約させられた時、俺に勇気がなかったから加奈子を悲しませ苦しい生活をさせた。俺以外の男を頼らざるを得ない状態まで作ってしまった。


その上に加奈子を親不孝な娘に仕立ててしまった。


社内で噂されていた「元彼はDV最低男」と言うのはまんざら嘘でもなさそうだ。
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