いつかウェディングベル

ただでさえ加奈子との距離を感じて寂しい毎日を過ごしている俺にとって、さらなる試練が待っていた。



「明日の飛行機とホテルの予約は取れています。いつものホテルです。」


「分かった。それで、今回は社長の同行になるのだが社長の分も忘れずに予約入れて貰っているんだよね?」


「はい、間違いなく。」


「分かった、ありがとう。社長の方には私から説明しておこう。」



俺は加奈子のウェディング部門ばかりに気を取られているわけではない。


日頃はJQ(株)の専務としての仕事を熟している。


最近では、保育施設の充実を求める社員の為に新たな保育施設を敷地内に建設しようと考えていてその手配にかなり時間がかかっている。


これまで使用していたスペースは加奈子達ウェディング部門が使うことに決まった。


ウェディング部門の事務所は手狭になっていたことでどこかへ移転を考えていたところ、保育施設の問題が浮上しこれ幸いと隣接する保育施設を加奈子らのスペースとして使うことにした。


新しい保育施設が完成するまでは加奈子らウェディング部門にはもう少し狭い所で頑張ってもらうしかない。


しかし、それほど時間はかからないだろう。


そんなことより、仕事中心の加奈子とただでさえ会えない俺は明日からの出張でもっと加奈子と会えない日が続く。



「はぁ・・・・」



つい、溜め息が出てしまった。仕事中にこんな態度をしたことなど殆どなかったのに、加奈子と再会してからはため息の連続の様に感じる。



「奥様と何かございましたか?」


「いや・・・・別に」


「喧嘩でしたら専務から折れるべきですよ。原因がどうであれ男が折れる方が全て上手くいきますよ。」


「君もそう思うのか? ご主人はいつもそうなのか?」


「はい、ですから夫に愛されているって思えて直ぐに許してしまうんですよ。」



この秘書は加奈子とは全くタイプの違う女だと俺は思っている。


きっと夫には素直に従う家庭では従順な妻なのだろうなと思った。


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