いつかウェディングベル

その夜、帰宅すると相変わらず加奈子は書斎に籠っている様で玄関へ出迎えも来ないし子ども達も俺の顔を見ようともやって来ない。


家族と一緒に暮らしているのにこんな寂しい思いをしなければならない生活に俺は最近考えてしまう。


これでいいのかと。


自問自答しても返ってくる答えは決まっている。


このままではダメだと。


家族はいつも一緒にいなければならないのに食事さえバラバラで会話も少なすぎる。


子ども達と過ごす時間も少なければ加奈子とも会話どころかキスさえ出来ていない。



明日から出張する俺としては今日は加奈子に触れていたいと書斎へ真っ直ぐ向かった。


いつも、この時間になると書斎で仕事をしている加奈子。


今日だけは俺の為に時間を使わせようと書斎のドアを乱暴に開け仕事の邪魔をしようと思った。



ところが、書斎は真っ暗で加奈子の姿はなかった。



「どこだ?」



俺がキッチンへ行くとそこには増田が食事の後片づけをしていた。



「あら、透さんお帰りなさい。お食事はどうなさいますか?」


「済ませて来た。それで、加奈子はどこにいるんだい?」


「若奥様でしたら先程からお待ちですよ。」


「書斎に姿がなかったけど、今日は仕事はしていないのだろうか?」


「若奥様にお聞きになられたらどうですか? リビングでお子様たちと遊んでいらっしゃいますよ。」



まさか子ども達と一緒だとは思わなかった俺は何かあったのかと驚いてリビングへと急いだ。


すると、芳樹や奈美と楽しそうに一緒に遊んでいた。


その光景が俺には嬉しくてしばらく見ていたくなった。



「パパ! おかえりなさい!」


「パパ、パパ!」


「ただいま、芳樹に奈美。」



小さな子ども達は俺の天使だ。駆け寄って来た二人を抱き上げ頬にキスした。


こんな光景は毎日でも飽きない。俺にとって一番幸せな時間かも知れない。


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