コンプレックス
ほれ、と吸いかけの煙草を渡されてドキッとした。天然タラシだ。仮にも口を付けて吸っていた煙草を異性の女に渡すなんて、何考えてんの?
気があるの?ないの?
そもそも女として見られてないのかも。
煙草一本で思い詰めてしまうあたしは、やっぱりこの男が好きなんだろう。好き、とは言っても別に何がしたいとか、されたいとか。彼と何処かへ行きたいだとか、そういう感情はない。
彼が"綺麗な女"と楽しそうに話していても別に何も思わないし。
「ほら、沙羅。灰が落ちる」
片方の口角だけを上げて笑う。あたしの一番好きな彼の表情。分かっててやっているのだろうか…釈然としないまま心吏から貰い受け、ぎこちない動作で恐る恐る煙草を口に咥える。
変な高揚感というか、後ろめたさがあった。何に対しての感情かは全く検討もつかなかったが、すぅ、と吸い込んだ煙は彼と同じ匂いがして、あ、心吏が身体の中に入ってくる。なんて変態染みた事を思った。そんな気持ち悪い自分を隠したくて、「うー。美味しくない」とあらかさまに顔を歪ませた。
「はは、そのうち美味くなるよ。よく噎せなかったな!相性が良いのか?」
「いや、噎せそう。けほっ」
「あぁ、それやるよ。俺新しいの吸うから」
慣れた手つきで新しい煙草を咥える心吏を横目に、初めて手にした煙草をまじまじと見つめる。以外に大きくて軽い。もっと細いと思ってた。…あぁ、そうか。心吏の手が大きいから小さく見えたんだ。
「なんか、あれだな。あー…沙羅小さいからさ、子供がいけないことしてるみたいだな!」
「うるせぇ」
うわぁ、また言っちゃったよ。なんでこんなに口が悪いのか分からない。もっと女らしくするべきなのは分かってるのに、自然に口をつく言葉はお世辞にも上品とは言えない。こんなあたしを心吏はどう思っているんだろう。今更、本当、今更ながら気になる。
「あ、沙羅」
「うん?」
「明日、海行かねぇ?」
大分短くなった煙草を見て、心吏が思い出したかのように言う。「明日!?」危ない、余りの突然に思わず咥えていた煙草を落としそうになった。
「明日じゃなきゃダメなんだ」
気があるの?ないの?
そもそも女として見られてないのかも。
煙草一本で思い詰めてしまうあたしは、やっぱりこの男が好きなんだろう。好き、とは言っても別に何がしたいとか、されたいとか。彼と何処かへ行きたいだとか、そういう感情はない。
彼が"綺麗な女"と楽しそうに話していても別に何も思わないし。
「ほら、沙羅。灰が落ちる」
片方の口角だけを上げて笑う。あたしの一番好きな彼の表情。分かっててやっているのだろうか…釈然としないまま心吏から貰い受け、ぎこちない動作で恐る恐る煙草を口に咥える。
変な高揚感というか、後ろめたさがあった。何に対しての感情かは全く検討もつかなかったが、すぅ、と吸い込んだ煙は彼と同じ匂いがして、あ、心吏が身体の中に入ってくる。なんて変態染みた事を思った。そんな気持ち悪い自分を隠したくて、「うー。美味しくない」とあらかさまに顔を歪ませた。
「はは、そのうち美味くなるよ。よく噎せなかったな!相性が良いのか?」
「いや、噎せそう。けほっ」
「あぁ、それやるよ。俺新しいの吸うから」
慣れた手つきで新しい煙草を咥える心吏を横目に、初めて手にした煙草をまじまじと見つめる。以外に大きくて軽い。もっと細いと思ってた。…あぁ、そうか。心吏の手が大きいから小さく見えたんだ。
「なんか、あれだな。あー…沙羅小さいからさ、子供がいけないことしてるみたいだな!」
「うるせぇ」
うわぁ、また言っちゃったよ。なんでこんなに口が悪いのか分からない。もっと女らしくするべきなのは分かってるのに、自然に口をつく言葉はお世辞にも上品とは言えない。こんなあたしを心吏はどう思っているんだろう。今更、本当、今更ながら気になる。
「あ、沙羅」
「うん?」
「明日、海行かねぇ?」
大分短くなった煙草を見て、心吏が思い出したかのように言う。「明日!?」危ない、余りの突然に思わず咥えていた煙草を落としそうになった。
「明日じゃなきゃダメなんだ」