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「どこ行っちゃったんだよ、心吏」


ねぇ、今何処にいるの。


ぐ、っと荒波のように押し寄せてきた切なさやら寂しさを抑え込みたくて、泣きたくなくて。煙草に火をつけた。

途端に彼の香りが広がって、目の奥が熱くなる。膜が張ったように視界がボヤけてきたなと思ったら、ボロボロと溢れ落ちる涙を抑える事など出来やしなかった。

今更ながら、

本当に今更ながら、気づいた。

依存していたのは煙草ではない。彼だったのだと。あたしの執着は常に彼にあって、だから心吏がいなくなる事で出来た隙間を、彼の香りで埋めようとしているのだと。

「しんり」


だいすき。


呟いた言葉はやっぱり安っぽかった。同時に、目先に彼の残像を見た気がした。

こちらを見てはは、と笑う。煙草の吸いすぎで少し掠れた声に、心臓が苦しくなった。


彼も苦しかったんだろうか。

海の底はさぞ冷たいだろう。暗い底に独りぼっちで沈んでいく時、貴方は何を思った?

何を思ってこの小波を分け、"何処に"向かったんだ。

蒼く雄大に波打つ海を見て確信した。

 

もう彼はいないのだと。


もう何処にも、世界中の何処にも、



もう心吏はいない。


















あたしは一時も煙草が手放せなくなった。

それは彼の残像を追っているのか、彼の死を認めたくないだけなのか。けれど煙草を咥えていると確かに聞こえてくる。

はは、と掠れた声で笑う、彼のこえが。










End.
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