みんなの冷蔵庫(仮)1
「父が今も冷蔵庫の中にいるかどうかは分からない。犯人の冷蔵庫と、お前達二人の冷蔵庫が繋がっているとも限らない。しかし、今はこの仮説に頼るしかない」


そこまで言うと、京極は一度目を伏せた。

私は静かにその横顔を見つめる。
横のシグマには背を向けるような体の向きをしていたから見えないが、多分、途中からはシグマも初めて聞く話である事が、気配で感じられた。


「くららを呼んだのは他でもない。冷蔵庫を開けて欲しいからだ」


そして京極は目を見開いた。
まるでシャッターを切る音がしそうな程はっきりと開かれたその瞳で、私を捉え、ゆっくり、でも力強く言った。




「開けて、そして中に入れて欲しい。僕を」



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