みんなの冷蔵庫(仮)1
私は佐田さんの胸に飛び付き、泣き出してしまう。

濡れたシャツから伝わる佐田さんの体温に、やっと安心でき、涙が後から後から溢れだす。

どうして泣いているのか、どうやって泣き止めるのかわからない。

ただ彼の広い背中に回した腕で必死にしがみつき、ボタンの取れたシャツの胸に顔をこすりつけ、大声で泣いた。


佐田さんは大きな手を私の肩に乗せる。


「もう大丈夫ですよ」


今まで聞いた中で、一番優しい声だった。


「さっきみたいに、呼んで下さい。いつでも、呼んで下さい」


佐田さんはそう言うと、優しく抱きしめてくれた。

雨の音も聞こえないくらい、私は泣き続けた。


< 226 / 491 >

この作品をシェア

pagetop