みんなの冷蔵庫(仮)1
先生は両手を広げてベットに付け、首を横に倒してポキポキいわせたり、ぐるぐる回したりながら、世間話のように続ける。


お昼にスーツ姿で帰宅した際の、京極の疲れた表情を思い出す。


「そんなにいろいろ大変なんですか?」


おずおずと尋ねると、謙信先生は眉間に人差し指を立て、足を組み直して「うーん」と低く唸った。


「大変というか……それもあるけど、あいつ両親の愛、てか、母親に執着あるからね。自分じゃ気付いてないかもだけど」

「執着?」


よく意味は分からない。

でも、母親が出て行ったと言ったあの時の寂しそうな表情や、忙しいばかり言う人間は嫌いだと言った時のあの苦しそうな顔を思うと、いろいろと胸に抱え込んでいそうだとは思う。

そして、佐田さんに対して時折見せる、すがりつくような瞳。

多分、京極の本当に弱い部分を、私はまだ知らない。


「僕のところは両親がいい年して未だにかなりラブラブなんだけど、それが気に入らなかったのか、京極とは疎遠で、今みたいにこうしてまともに話しだしたのって、お互い大学入ってからなんだよね」


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