みんなの冷蔵庫(仮)1
俯いてしまいたかったけど、そうしない方がいい事は分かっていたので必死に耐えた。

ルームミラー越しではない佐田さんに見つめられ、膝の上の握りこぶしに汗が滲み、変な笑い顔になった。

多分、今の私の顔、可哀相なくらい歪んでる。

でも何も知らない佐田さんは、残酷なくらい素敵な笑顔を見せる。


「そうだ、今日呼びましょうか? コックもいない事だし。彼女料理だけは上手なんですよ」

「呼ぶな」


楽しそうに話す佐田さんの声を叩き切るように、京極が低く短く言った。


「そうだよ、料理はくららちゃんが上手だもん」


シグマも声を張り上げる。

そういや今日昼食作ったのに、佐田さんには食べて貰えなかったなぁ、彼女はいつも作ってるのかな、なんて卑屈な考えが浮かんだりして。

二人ができるだけ私が傷付かないようにしようとしてくれていて、それが余計私が可哀相だって証拠みたいで鼻の奥がツンとする。


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