みんなの冷蔵庫（仮）1

「あの……髪の長い？」

「そうですよ」


京極はひそひそと小声で聞いていたけど、佐田さんは隠すつもりもないみたいで、あっけらかんとした声で即答した。


車内は言い表しようのない、微妙な空気になり、その暗さに気付いた佐田さんが信号停車した途端、助手席や後ろを振り返った。


「何です皆さん、そんなに変ですか？　いい歳なんですから、彼女くらいいますよ」


笑いながら言う佐田さんの声が虚しく響き、段々おかしな空気になっていく。

事情を知る二人が私に気を使っている。
何て言おうかと考えている。

それが分かるから、私は大きく深呼吸をして口を開いた。


「へ、変じゃないですよ！　佐田さんの彼女、会ってみたいです」


必死に平静を装うつもりが、出だしから声が裏返ってしまった。