みんなの冷蔵庫(仮)1
頭の中を「どうしよう」がいっぱい駆け巡っている。


「佐田に恋なんかしてなかったんだよ、最初から」


突然京極が刺々しく言った。


「吊橋を異性と渡ると恋に落ちるっていうあれだ。危ないところを助けて貰った、そのドキドキを恋と勘違い――」


パチンと破裂音が響く。


「違うってば!!」


まただ。
また京極をぶってしまった。

涙目で睨み付けても、京極はその美しい唇を動かす事を止めてくれなかった。


「違わないだろ。一日やそこらで本当の恋なんかするもんか」


馬鹿にしたような言い方の方が、よっぽどよかったと思う。

説き伏せるような言い方に、カッと火が着いたみたいに体中が怒りで熱くなった。

細胞なんて騒がない。
そんな事もう二度とさせない。


「馬鹿っ!!」


力の限り叫び、京極の顔も見ずに部屋を飛び出した。

前みたいに、背中に名前を呼び掛ける声は投げられなかった。



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