カフェには黒豹と王子様がいます
 私と今日子さんが同時に言った。

「いやだ!恭一、フランスなんて行かないで!」

「今日子ちゃん、今すぐって話じゃないよ」

 小野田先輩は少し考えて、そしてマスターをまっすぐに見た。

「考えてみます」

「すげえな、小野田」

「いや、接客は徳永にはかなわないから、なんか自分の生かせるものってずっと考えてたんだ」

 そう言えば、前に小野田先輩に言われたことがある。

『自分の出来ること、自分のいいとこを伸ばすように接客したらどうだ?いろんな店員がいるからいい店になるんだ』

 あれは私に言いながら、自分にも言ってたんだ……。

 人ができることをうらやむんじゃなくて、相手を認めて、自分を信じて、自分の出来ることを生かしたことをやっていこうとしている。

 すごいな、本当に尊敬しちゃう。
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