カフェには黒豹と王子様がいます
「行こう!」

 徳永先輩は私の手をつかむと、私を立たせ走り出した。

 こっちの方向はカフェ『コンフォート』

 いやだ!行きたくない!

 小野田先輩に会いたくない!

 私は立ち止った。

「西口?」

 下を向いて首をふる私。

 徳永先輩は私の顔を両手で持ち、自分の方を向かせた。

「聞いて。……小野田は、今日フランスに行く」

 え?

 少し目を見開いた。

 徳永先輩は私から視線をはずす。

「……今店にいるはずだ。今日会わなかったら、もう会えなくなる」

 もうそれでもよかった。

 また小野田先輩に会って辛い思いをするなら、このまま徳永先輩と……。
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