カフェには黒豹と王子様がいます
 私は徳永先輩にしがみついて首をふった。

 でも、その手は振りほどかれた。

「もう、僕も限界なんだよ。こんな、西口じゃない西口がそばにいてくれてもつらいだけだ!」

 ……私、徳永先輩を苦しめてた……?

「元の西口に戻ってほしいんだ。……僕の力じゃ、無理だ」

 辛そうな徳永先輩を抱きしめる。

 徳永先輩も、私をぎゅっと抱きしめた。そして、パッと離すと、手をつないだ。

「早く行こう!こんなところで立ち止まっている場合じゃない」

 涙があふれる。

 ずっと枯れてしまったと思っていた涙が、次から次からあふれ出る。

 徳永先輩は私の手を強引に引っ張り、店に向かった。


「小野田!」

 店に入るなり、徳永先輩が叫ぶ。

 出てきたのは豊川くん。

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