カフェには黒豹と王子様がいます
 小野田先輩が心配そうにのぞきこむ。

 徳永先輩が頭をそっとなでる。

「怖かったな、ごめんな一人で帰して、ごめん」

 そう言ったのは小野田先輩だった。

「来て……くれて、あ りがとう」

 泣きながら、それだけ口にするのが精いっぱいだった。

 体の震えが止まらない。


「待ってろ」

 小野田先輩は近くの自動販売機まで走って行った。

 徳永先輩が私の顔を覗き込む。

「抱きしめても……いいかな?」

 なんて答えたらいいかわからず下を向いていると、優しい腕でそっと抱き締めて頭をなでてくれた。

 何とか私の震えを止めようとしてくれているみたいだった。

「もう、怖いめにはあわせないから」

 少しずつ震えがおさまる。
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