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スーツに着替えいつも通りに出勤し、そして閉店を迎える。
ただいつも通りにこなす事が当たり前で、その当たり前が今では良いようには思わなくて。
仕事だと割り切ってしている事でも、それが正しいのかなんて分からなかった。
お疲れ様です。とゾロゾロ帰って行く仲間達を見送って、俺もソファーから立ち上がった時、
「おい、楓」
流星の声で進めようとした足を止める。
「なに?」
「最近お前、すぐ帰宅かよ」
「悪いかよ」
「なんかあった?」
意地悪くフッと鼻で笑った流星に「別に」と返す。
「んな訳ねぇだろ。速攻帰宅、余裕もって来てたのも開店ギリ。同伴もアフターもしてる感じじゃなさそうだしよ」
「……」
「ここ最近、疲れたって一言も言わねぇし、眠いも言わない。帰ってヤケ酒もしてねぇ感じだしな」
「なんだお前。なんの捜索だよ」
そう言って思わず俺は顔を顰めた。
「付き合い悪くね?」
「俺、そんな付き合いいい奴だっけ?」
「いや?良くはねぇけど最近は悪すぎ」
「あっそ」
「断りすぎ。他の奴も言ってたけど。理由は?」
「は?理由?つか、なんだよお前」
「お前のその領域に入りてぇと思って」
ははっ、と笑う流星に思わず顔を顰めた。
「は?意味わかんねぇ。俺、自分のテリトリーん中に他人が入ってくんの嫌いって知ってんだろうが」
「今回は入りてぇと思った。開店前に沙世ママに会ったんだよな」
…マジかよ。
更に意地悪く笑った流星に嫌な予感がする。
未だクスクス笑っている流星を見た瞬間、話が長くなりそうだと感じ、俺は仕方なくその場に腰を下ろした。