Domain
トビの仕事が休みの日、俺はひたすら眠りについた。
だけどその眠りもスマホから鳴り響く着信音の音で、遮られる。
あまりにしつこく鳴り響く音に、俺はため息を吐きながらスマホを掴んだ。
…沙世さん。
「…はい」
「何してるの?」
「寝てた」
「ちょっと今からうちに来てよ」
「は?なんで?話したいことがあるから来て」
「いや、俺、寝たいんだけど」
「じゃあ、私が翔くんちに行くわ」
「え、なんで?」
「だから話したいことがあるって言ったじゃない。行くから待っててね」
一方的に切られた電話。
なんの話だよ、と思いながら俺は再び目を瞑った。
目を瞑った瞬間、秒殺で眠りに落ちた事も知らず、耳元で鳴り続ける音で意識が舞い戻った。
「…はい」
「ちょっと開けなさいよ。何してるのよ」
ため息交じりの沙世さんの声に、
「忘れてた」
と呟き立ち上がる。
「もぉ…」
まったく。と言いたそうな声で呟かれ、俺はエントランスの扉を解除した。
「開けた」
そう言って電話を切り、玄関の鍵も開け、乾ききった喉を潤そうと冷蔵庫から水を取り出した。
ソファーに座り水を飲んでいると、沙世さんがスーパーの袋を下げてリビングに顔を出す。
「もぉ、なによこれ」
袋をテーブルに置くと同時に呟かれる言葉。
「うん?」
「タバコの吸い殻。捨てなさいよ」
「あー…」
「って言うか、何なの?半分も吸ってない吸い殻ばかりじゃない。そんなんだったら吸うのやめなさい」
来たと思えば俺に説教。
この人は昔からそうだ。
「つか、何だよ、眠いんだけど」
「何言ってるのよ。もう11時でしょ?」
そう言われて今の時間を初めて知った。
掛け時計に視線を向けると、針が11時5分前を指す。
「…で、なに?」
けだるそうにそう口を開く俺に、沙世さんは目の前のソファーに腰を下ろした。