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「あれは普通に傷付いてたわ。でも普段、好きとか言ってこねぇのにさ、会いたかった。とか言われたら、逆に、え?どうした?とか思うわけよ」

「あー、なんかわかる気するわ」


美咲もそうだな、と思いながらフっと鼻で笑う。

あいつも急に不意打ちをしてくるからわかる。


「俺も色々あったからなぁ。ホストしてっからさ、色んな女と毎日会ってっだろ?」

「うん」

「だからさ、女絡みとかもあって、桃華のやつに言われたんよ。もう苦しいって、付き合ってるのがしんどいって泣かれた」

「そうなんすか…」

「泣かせねぇように頑張ってだけど、ホストしてる以上どうにも出来ねぇし、俺も辞めようとまで思ってなかったし、大変だったな」


そう言って蒼真さんは思い出すかのように語って笑みを漏らした。

そう言われると、美咲もそうなのかな、って思ってしまった。

夜の仕事に出る時に寂しそうにする美咲を見てそう思う事は度々あった。

だけど、あいつは決して一言も言わない。

そう思うと、桃華さんと美咲が似てるように感じた。


「でも桃華さん言ってましたよ。今は幸せって」

「なにそれ。俺には言ってこねぇのに」

「ははっ、そーなんすか?」

「全くな。それ聞いたら、もう一人、子供出来そうだな」


俺はハハっと笑って相変わらず変わってねぇなこの人と、思わせる。


「え?まだ作るんすか?」

「いや、もーいいけど。桃華も大変だろうし」

「おぉ。すげぇ愛してんね、桃華さんのこと」

「そう。今でも愛してんだよ。お前が女を想ってるよりすげぇ好きなの」

「なんすか、そのノロケ。俺もすげぇ愛してるっつーの」

「全く会わねぇのに?」

「そう。全く好きも会いたいも言われねぇけど」


そう口を開いて苦笑いが漏れ、


「でも、しつこいから付き合ってるだけ。は、言われねぇけど」


昔言われた事を思い出し、更に笑いに変わる。
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