君桜
紅雨


桜の花は、まだ残っていた。


雨上がりの澄んだ青空が、水滴を煌めかせて、桜は少しずつ、はらはらと舞う。

そうしてふわりと、水溜まりの中へと舞い落ちた。


さくらはそれを見届けると、ふっと笑いたくなって、でも笑えなくて、前を向いて再び歩きだした。



どうしてアタシは、笑ったりできないの?

と、そう思いながら。



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